生成AIエージェント時代の真の「ノーコード」とは何か——「ワークフローを作る」時代は終わるのか
- 峻 福地
- 2025年12月26日
- 読了時間: 13分
AIエージェント時代の真の「ノーコード」とは
なぜAIが1秒で高品質なコードを書ける時代に、ノーコードツールで1時間以上かけて、それより品質の低いワークフローを手作りする必要があるのでしょうか。
これはまるで、カーナビが最適ルートを瞬時に計算できる時代に、紙の地図を広げて定規で距離を測り、曲がる交差点を一つずつメモしてルートを計画するようなものです。

しかし、これが今のAIエージェント開発で起きている現実です。
AIエージェントはかなり強力である一方で、n8n、Dify、Microsoft Copilot Studio、Google Workspace Studio——こうしたノーコード/ローコードツールで、業務フローを「構築」するために何時間も費やす。結局エンジニアしか作れない、エンジニアがつきっきりでメンテナンスしている、リテラシーが高い人しかワークフローを使いこなせず全社展開できない。
多くのAIエージェント導入に取り組む企業がこういった課題に直面しています。
LLM登場以前の従来の「ノーコード」的な手法をそのままAIエージェント開発に当てはめることは最適解とは言えません。私たちは根本的な「アプローチの誤り」に気づくべき必要があります。
では一体LLMの能力を最大限に引き出すことができる真のLLMネイティブで「ノーコード」なAIエージェント開発とはどんなものでしょうか?
従来の手法とは全く発想が異なるパラダイムシフト的なアプローチが2025年末にAnthropicやCloudflareといった先端AI企業によって発見されています。
重要な発見:AIは「手順を与えられる」より「目的+制約」を渡して「任される」方が優秀だった

発見のきっかけ
AIエージェントに仕事をさせるとき、私たちは長らく「手順」を渡してきました。「まずAを実行して、その結果をBへ。もしCならD…」というように、新入社員に手順書を渡すイメージです。しかしCloudflare/Anthropicが提唱した実装パターンが明らかにしたのは、AIに手順書を与えるといった人間にとって直感的なアプローチが、AIの能力を制限していたという逆説的な事実でした。
最初にこの問題がはっきり表れたのが、AIと外部ツール連携の領域――いわゆるツール呼び出し(Function Calling)です。ツール呼び出し(Function Calling)とは、AIがカレンダーやメール、データベースなどの外部サービスを操作する仕組みのことです。
手順の沿って逐次ツールを呼び出して使う手法の課題
ツール呼び出し(Function Calling)でよく起きるのは、次のような“細切れ往復”です。
ツールを呼ぶ
結果を読み取る
次のツールを選ぶ
途中結果をまた渡す
例外が起きたら分岐する
これは人間にとっては直感的な方法でしたが、AIにとってはこの作業を繰り返すほど、実行が遅くなり、コストが増え、ミスも増えやすくなります。理由は単純で、会話の往復が増えるほど「説明」「中間結果」「判断」が積み重なり、コンテキストと推論の負荷が上がるからです。
Cloudflareのエンジニアは、この状況を次のように表現しています:
「LLMにツール呼び出しでタスクを実行させるのは、シェイクスピアに1ヶ月間中国語の授業を受けさせ、その後中国語で戯曲を書かせるようなものだ。彼の最高の作品にはなり得ないだろう。」

パラダイムシフト:LLMを「プログラマー」として扱う
そこで出てきた実用的な結論が、AIにコードを書かせて、一括で実行するというアプローチです。
人間は「目的」と「制約(やってよい範囲、守るべきルール)」だけを伝え、AIはその範囲内で必要な処理をコードとして組み立て、実行して結果を返す。これが、いわゆる Code Mode / Programmatic Tool Calling の発想です。この発見は、AIエージェント開発における大きな転換点となりました。

あらゆる場面で同じことが言える
「AIに目的と制約だけ渡して、コードを書かせて、一括で実行する」という発見は、ツール呼び出し(Function Calling)に限った話ではありません。AIエージェント開発のあらゆる場面で、同じ原則が当てはまります。
ワークフロー構築(n8n / Dify など)
人がブロックを組み合わせて“正しい手順”を作るほど、例外と変更で複雑化する
AIに「目的+制約」を渡し、処理はコードとして組み立てさせた方が速く、修正も容易になりやすい
データ前処理(名寄せ・正規化・差分検知・ルール適用)
現実のデータは例外だらけで、手順書通りにいかない
AIがコードで前処理し、必要な情報だけを整理して返す方が安定する
マルチAIエージェント(LangChain / LangGraph 等)
役割分担、状態管理、合流条件、再試行などは「設計」が必要
会話の往復で組むより、コードとして一貫した制御にした方が壊れにくい
外部ツールの接続/選定(どのAPIを使うべきか、どう繋ぐべきか)
AIエージェント開発で意外と重いのが、「何をやりたいか」に対して 適切な外部ツールやAPIを選び、正しい形で接続する工程です。
同じ目的でも、選択肢が多すぎる(CRM、会計、人事、ストレージ、チャットなど)
似た名前のAPIが並び、違いが分かりにくい(どれが正式で、どれが推奨で、権限や制限が何か)
企業の現場では、そもそも「接続してよいツール」「扱ってよいデータ」「許可された権限」が絡む
結果として、非技術者はもちろん、技術者であっても“最初の選定と接続”でつまずきやすい
結局、「手順を作る仕事」そのものをAIに任せ、人は“判断が必要なポイント”に集中する。これが、生成AI時代の実務的な最適解になりつつあります。
なぜAIに任せコードを書かせた方が上手くいくのか
理由は、AIの「学習経験」にあります。
人間が作る「手順書」や「ワークフロー」は、その業務に詳しい人が自分の知識の範囲で設計したものに過ぎません。
一方、AIは何百万ものオープンソースプロジェクトから、膨大な「仕事の進め方」を学習しています。コードの書き方、データの処理方法、エラーへの対処法——実務で使われている知見の集積です。

つまり、AIにとって「コードを書いて仕事を進める」ことは母国語のようなものです。人間が作った不完全な手順書に従わせるより、AI自身に段取りを任せた方が上手くいくのは、ある意味当然のことでした。
現在のAIツールが抱える構造的限界
「ノーコード」なのに「作れる人がいない」問題
n8n、Dify、Microsoft Copilot Studio、Google Workspace Studio——これらのツールは「ノーコード/ローコード」を謳い、非エンジニアでもAI自動化を実現できると期待されています。
しかし現場では、異なる現実が起きています。

ツール | 期待 | 現実 |
n8n / Dify | ノーコードで誰でも自動化 | フロー設計・API接続設定が必要。挫折者多数 |
LangChain / LangGraph | 柔軟なAIエージェント構築 | Pythonの専門知識が必須。一般ユーザーには到達困難 |
MS Copilot Studio / Google Workspace Studio | MS/GoogleのAI構築基盤 | 複雑な業務には追加開発が必要 |
ChatGPT / Gemini /Claude単体 | 万能AI | 単発の質問応答は得意だが、複数ツールを跨ぐ業務自動化は困難 |
結果として「作れる人がいない」「属人化する」「PoC止まりになる」——こうした声が、日本企業のあちこちで聞かれます。
問題の本質:「人間が構築する」前提
これらのツールに共通する構造的な限界があります。それは、「人間がワークフローを構築する」ことを前提にしているという点です。
どんなに優れたビジュアルエディタを用意しても、どんなにテンプレートを充実させても、「構築する」という行為そのものが、専門知識と時間を要求します。
ボトルネックはLLMの能力そのものより旧来のパラダイムをLLMに適用しようとするアプローチ方法や扱う人のリテラシーの欠如にあるのです。
「ならばAIにワークフローを構築させればいいのでは?」という発想で各プラットフォーム上で自然言語でワークフローを構築する機能も生まれています。
しかし、これも本質的な解決にはなりません。なぜなら、各プラットフォーム固有のワークフロー構築方法は、AIの学習データには限定的にしか含まれていないからです。n8nのノード配置ルール、Difyの接続方法、Copilot Studioの設定パラメータ——これらはツール固有の知識です。
これはAIに「外国語で小説を書かせる」ようなもので、付け焼き刃の知識では本当に複雑な業務ロジックを組み立てることはできません。
パラダイムシフト:「構築」から「実行」へ
では、どうすればAIの真の能力を引き出せるのでしょうか?
答えは明快です。人間が「構築」するのではなく、AIには目的と制約だけを与え、「実行」を任せることです。
従来のアプローチ
人間: ワークフローを設計 → ノード配置 → 接続設定 → テスト → 修正 → 本番化
LLMファーストのアプローチ
人間: 「この仕事をやっておいて」と目的を伝える
AI: 必要な手順を自分で組み立て → コードを生成 → 実行 → 結果を返す
この転換により、「ワークフローを構築できる人」を増やすのではなく、「構築しなくても動く」状態を増やすことができます。
Agens:既存プラットフォームと組み合わせる「次世代MCP実行基盤」
Agensは、株式会社homulaが提供する「構築不要(Build-less)のMCPベースAIエージェント実行基盤」です。
重要な位置づけ:置き換えではなく「組み合わせ」
Agensは、n8nやDify、Copilot Studioを置き換えるものではありません。
これらの既存プラットフォームと組み合わせることで、「人間が構築しなければならなかった部分」をAIに任せ、LLM時代の真のノーコードを実現します。
既存プラットフォーム | Agensとの組み合わせ効果 |
n8n / Dify | 複雑なフロー構築が不要に。自然言語で指示するだけで連携が動く |
Microsoft Copilot Studio | カスタム開発なしで高度な業務自動化を実現 |
Google Workspace Studio | 設定工数を削減し、すぐに本番運用へ |
ChatGPT / GPT API | 単発応答から複数ツール連携へ拡張 |
Claude / Gemini | モデルの能力を最大限に引き出す実行基盤を提供 |
LangChain / LangGraph | コーディング不要で同等以上の柔軟性を実現 |
Agensが提供する3つの機能
Agensは「次世代MCPハブ」+「コード実行基盤」として、以下の3つの機能を提供します。
1. 探す(Tool Search)
AIに最初から全てのツールを教える必要はありません。AIが「今必要なツール」を自分で検索し、必要な機能だけを動的に取得します。
数千のAPIがあっても、AIの処理能力を圧迫しません。
2. 組み立てる(Programmatic Tool Calling)
AIが「目的を達成するためのコード」を自動生成します。人間がワークフローを設計する必要はありません。
複雑な条件分岐、繰り返し処理、エラーハンドリングも、AIが適切に組み込みます。
3. 実行する(Code Mode / Isolated Runtime)
AIが生成したコードを、安全なサンドボックス環境で一括実行します。
従来の「1ステップ実行→結果確認→次のステップ」という往復がなくなり、処理速度が劇的に向上します。
定量的効果(ベンチマーク)
「20人分の経費精算チェック」というタスクで比較した結果:
指標 | 従来方式 | Agens | 改善率 |
処理時間 | 45秒 | 3秒 | 93%削減 |
トークン消費 | 150,000 | 15,000 | 90%削減 |
コスト(概算) | ¥300/回 | ¥30/回 | 90%削減 |
AI往復回数 | 30回 | 2回 | 93%削減 |
対応モデル:どのAIでも使える
Agensは**モデル非依存(Provider-agnostic)**で動作します。
Claude、GPT、Gemini、Llama——お使いのAIモデルにAgensのURL(エンドポイント)を1つ設定するだけで、「構築不要モード」が利用できます。
なぜ「組み合わせ」なのか:既存投資を活かす
「新しいツールを導入するなら、既存のn8n/Difyは捨てるべき?」
いいえ、その必要はありません。
既存ツールには既存ツールの強みがある
シナリオ | 最適なアプローチ |
定型的で変更頻度が低い業務 | n8n/Difyで構築し、安定運用 |
人間の承認プロセスが必須な業務 | 既存ワークフローにAgensを組み込み |
可視化・監視が重要な業務 | 既存ツールのダッシュボードを活用 |
変動が多く柔軟な対応が必要な業務 | Agensで自然言語から動的に実行 |
ツール連携が複雑で構築コストが高い業務 | Agensで構築工数をゼロに |
PoCを素早く回したい業務 | Agensで即座に検証 |
Agensを併用することで、n8n/Dify/Copilot Studio/LangChainを「より簡単に」「より強力に」使えるようになります。
既存の投資は無駄にならず、むしろその価値が高まります。
エンタープライズ対応:本番に出せるガバナンス
「AIに任せる」と言っても、企業利用では統制が必須です。Agensは「構築不要」で現場が自由に動く一方で、情シス・管理部門には強固なガバナンスを提供します。
Agens Controlの機能
機能 | 説明 |
RBAC/ABAC | ユーザー・部署別の細かな権限制御 |
監査ログ | 全API実行を5年保存。誰が何を実行したか完全追跡 |
DLP/WAF | 機密情報の外部送信を自動検知・遮断 |
閉域網対応 | セルフホスト/VPC/オンプレ環境での運用が可能 |
SSO/SAML | 既存の認証基盤と統合 |
導入ステップ:二段階で進める
Phase 1:部門PoC(最短で価値を出す)
AgensのURLを1つ設定するだけで開始
構築不要モードで「まず動かす」
成功パターンを業務レシピとして資産化
Phase 2:全社展開(統制・ガバナンス)
SSO/SAMLで既存認証基盤と統合
DLP/監査ログを運用に組み込み
必要に応じて閉域網/セルフホストへ移行
よくある質問(FAQ)
Q: 「構築不要」とは、本当に何も設定しなくていいのですか?
A: ツール接続の初期設定(OAuth認証等)は必要ですが、従来のようなワークフローの設計・構築工数を大幅に削減可能です。「予算オーバーの人を探して通知して」と自然言語で指示するだけで、Agensが自動でツール選択・手順組み立て・実行を行います。
Q: 「AIにコードを書かせる」ということは、結局エンジニアが必要では?
A: いいえ。AIがコードを書き、AIが実行するため、ユーザー側にコーディングスキルは不要です。ユーザーは日本語で「何をしてほしいか」を伝えるだけ。人間がコードを書く・読む・デバッグする必要はありません。これこそが「LLM時代の真のノーコード」です。
Q: n8nやDifyで既に構築したワークフローがあります。移行が必要ですか?
A: 移行の必要はありません。既存のワークフローはそのまま活用しつつ、Agensを併用できます。「構築が難しい/工数がかかる」業務から順にAgensに任せることで、段階的に効率化を進められます。
Q: セキュリティは大丈夫ですか?AIに業務を任せて情報漏洩しませんか?
A: Agens Controlでは、DLP(情報漏洩防止)機能がAIの出力を監視し、機密情報の外部送信を自動で遮断します。全API実行は監査ログに記録され、「誰が」「いつ」「何を」実行したかを完全に追跡可能です。閉域網やセルフホスト環境での運用にも対応しています。
Q: どのAIモデルに対応していますか?
A: Claude、GPT、Gemini、Llamaなど、主要なAIモデルすべてに対応しています。モデル非依存(Provider-agnostic)設計のため、お使いのAI環境をそのまま活かせます。
まとめ:「作る」から「任せる」へ
AIエージェント開発は、大きな転換点を迎えています。
従来の常識: 人間がワークフローを設計・構築し、AIはそれに従って実行する
新しい常識: 人間は目的を伝え、AIが手順を組み立てて実行する
この転換を支えるのが、「次世代MCPハブ」+「コード実行基盤」としてのAgensです。
Agensの機能 | 役割 | 効果 |
Tool Search | 必要なツールを自分で探す | コンテキスト88%削減、精度向上 |
Programmatic Tool Calling | 手順をコードで自動生成 | トークン85%削減 |
Code Mode | 安全な環境で一括実行 | 処理時間93%削減 |
Agensは、お使いのAIプラットフォーム(n8n / Dify / Copilot Studio / LangChain / GPT / Claude / Gemini)と組み合わせることで、LLM時代の真のノーコードAIエージェント開発を実現します。
ワークフロー職人は、もういりません。 AIを『作る』時代から、AIが『自分で考えて動く』時代へ——Agensがその実行基盤を引き受けます。
技術的背景(詳細を知りたい方へ)
本記事で紹介した「AIに任せる」アプローチは、以下の技術研究に基づいています。
Code Mode / Programmatic Tool Calling
従来のFunction Callingでは、AIがツールを1つ呼び出すたびに「実行→結果確認→次の呼び出し」という往復が発生していました。Code Modeでは、AIが実行計画全体をコードとして生成し、サンドボックス環境で一括実行します。これにより、往復回数とトークン消費を大幅に削減できます。
Tool Search Tool
数百〜数千のツールがある環境では、全ツールの定義をAIに渡すだけでコンテキストウィンドウを圧迫します。Tool Search Toolは、AIが「今必要なツール」をキーワードで検索し、必要な定義だけを動的に取得する仕組みです。
Tool Use Examples
ツールのスキーマ定義だけでは、AIが使い方を間違えることがあります。日付フォーマット、IDの命名規則など「慣習」を伝えるため、具体的な呼び出し例を提示することで精度が向上します。
関連リソース
Agensは、株式会社homulaが提供するAIエージェント実行基盤です。日本企業のAIエージェント導入をリードするAIインテグレーターとして、PoC支援から本番運用まで伴走します。
AIエージェント導入・業務自動化についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。



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