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AIエージェント導入でフォローしておくべき「共通規格」の動き ― Linux Foundation「Agentic AI Foundation (AAIF)」とは

  • 執筆者の写真: 峻 福地
    峻 福地
  • 2025年12月15日
  • 読了時間: 8分
AIエージェント導入でフォローしておくべき「共通規格」の動き ― Linux Foundation「Agentic AI Foundation」とは

Agentic AI Foundation (AAIF)とは?独自仕様で作り込む前に知っておきたいこと

AIエージェントの導入が本格化する中、2025年12月にLinux FoundationがAgentic AI Foundation(AAIF)を設立しました。OpenAI、Anthropic、そして決済サービス「Square」や「Cash App」を運営するBlock社が設立メンバーとして技術を提供し、AWS、Google、Microsoft、Cloudflare、Bloombergがプラチナメンバーとして参画しています。


なぜこの動きが重要なのでしょうか。


日本企業のシステム開発では、独自仕様で作り込んでしまい、後からグローバルな共通規格が登場して「作り直し」を迫られるケースが少なくありません。ERPやCRM、APIの設計など、過去に何度も繰り返されてきたパターンです。


AIエージェントの領域でも、各社がバラバラの接続方式やルールで開発を進めれば、同じ轍を踏むことになります。AAIFは、こうした断片化を防ぐための業界横断の共通規格を策定・維持する組織です。


株式会社homulaは、日本のエンタープライズ企業向けに、MCPやn8nを活用して最適なAIエージェントアーキテクチャを設計・実装するAIソリューション・アーキテクトとして、この共通規格の動向とその活用方法を解説します。



なぜ今、共通規格が必要なのか ― 企業が抱える3つの課題

AIエージェント導入を検討する企業は、以下のような構造的な課題に直面しています。

課題

これまでの状況

ビジネスへの影響

ベンダーロックイン

各社が独自の接続方式・APIを提供

将来の技術選択肢が制限され、乗り換えコストが増大

断片化

ツールごとに個別の統合開発が必要

開発工数が膨らみ、保守コストが増加

ガバナンス不在

セキュリティ・安全性の基準が未整備

コンプライアンスリスク、監査対応の困難さ


AAIFの役割

AAIFは、これらの課題に対し特定企業が支配しない中立的なガバナンスのもとで共通規格を策定・維持します。


OpenAIのエンジニアであるNick Cooper氏は、AAIFについて「単一のプロバイダー、単一のホスト、単一の企業になることは決してない」と述べています。AAIFでは技術運営委員会が意思決定を行い、資金を多く出した企業が発言権を独占できない仕組みになっています。つまり、特定ベンダーの都合で規格が歪められるリスクが排除されています。


これは、LinuxやKubernetesなど、Linux Foundationが長年培ってきたガバナンスモデルと同じです。


AAIFが策定する3つの共通規格


1. Model Context Protocol(MCP)― AIエージェントの「共通接続規格」

AnthropicがAAIFに提供したMCPは、AIモデルと外部システムを接続するための共通規格です。「AIエージェントのUSB-C」とも呼ばれています。


なぜMCPが必要か

USB登場以前、プリンターやキーボードはメーカーごとに異なるコネクタが必要でした。USBという共通規格ができたことで、どのメーカーの周辺機器でも同じポートで接続できるようになりました。

AIエージェントの世界でも同じことが起きています。現状では、Salesforceと連携するAIエージェント、SAPと連携するAIエージェント、Microsoft 365と連携するAIエージェント…と、システムごとに個別の接続開発が必要です。

MCPは、この「個別開発の繰り返し」を不要にする共通接続規格です。


MCPの技術仕様

要素

仕様

企業にとってのメリット

通信基盤

JSON-RPC 2.0

既存システムとの親和性が高い

トランスポート

Stdio(ローカル)/ Streamable HTTP(リモート)

柔軟なデプロイメントが可能

認証

OAuth 2.0対応

Azure Entra ID、Oktaとの統合が容易

コアプリミティブ

Tools / Resources / Prompts

構造化されたAPI設計


MCPの普及状況

現時点で10,000以上のMCPサーバーが稼働しており、Claude、Cursor、Gemini、Microsoft Copilot、VS Code、ChatGPTといった主要プラットフォームで採用されています。

独自の接続方式で開発を進めてしまうと、これらの主要プラットフォームとの相互運用性を失うリスクがあります。


2.AGENTS.md ― AIコーディングエージェントの「共通指示フォーマット」

OpenAIが提供したAGENTS.mdは、AIコーディングエージェントに指示を与えるためのシンプルなMarkdownファイル形式の共通規格です。


乱立する設定ファイル

従来、AIコーディングツールごとに異なる設定ファイルが必要でした。

ツール

従来の設定ファイル

Cursor

.cursorrules

Windsurf

.windsurfrules

Claude

GitHub Copilot

.github/copilot-instructions.md

これでは、ツールを乗り換えるたびに設定を書き直す必要があります。AGENTS.mdは、これらを単一の共通フォーマットに統合します。


AGENTS.mdに書く内容

  • Project Overview: エージェントの役割と目的

  • Build & Test: ビルド・テストコマンド

  • Architecture: 主要モジュールとパターン

  • Coding Conventions: スタイル、命名規則、リントルール

  • Security: APIキー、認証フロー、機密データの取り扱い

  • Git Workflow: ブランチ戦略、コミット規約


普及状況

  • 60,000以上のオープンソースプロジェクトで採用

  • OpenAI Codex、GitHub Copilot、Google Jules、Cursor、Gemini CLI等でサポート

  • OpenAI Codexは、AGENTS.mdを使用して200万以上の公開プルリクエストを処理


3. Goose ― Block社が開発した共通規格対応のエージェントフレームワーク

Block社は、決済サービス「Square」やモバイル決済アプリ「Cash App」を運営するフィンテック企業です(Jack Dorsey氏が率いる会社で、旧Twitter社とは別の企業です)。


Block社がAAIFに提供したGoose(グース)は、MCPに対応したエージェントフレームワークの参照実装です。


Gooseの特徴

  • ローカルファースト設計: ユーザーのローカル環境で動作し、データのプライバシーを保護

  • MCP対応: 共通規格を通じて様々なツールと連携

  • オープンソース: 誰でも自由に利用・改変が可能


Block社のAI技術リードであるBrad Axen氏は、「オープンな代替手段が、独自仕様のエージェントに大規模で匹敵できることの証明」とGooseを位置づけています。


Block社内では毎週数千人のエンジニアがGooseをコーディング、データ分析、ドキュメント作成に利用しています。これは、共通規格に準拠したツールが実用レベルで機能することを示しています。



共通規格を踏まえた導入アプローチ

1. Best-of-Breed戦略の検討

共通規格の普及により、特定ベンダーに縛られないAI基盤設計が可能になります。

要件

最適なアプローチ

技術選択例

アジリティ重視

Low-Code / 高速実装

n8n, Dify

複雑な推論

Pro-Code / フルスクラッチ

LangGraph, LangChain

システム統合

共通規格での接続

MCP, Agens

データ基盤

高速検索・RAG精度向上

Pinecone, Snowflake

homulaは、このBest-of-Breed戦略を具現化するAIエージェント技術コンサルティングを提供しています。お客様のガバナンス要件と事業フェーズに合わせ、これらの技術スタックを最適に組み合わせるアーキテクチャ設計を行います。

2. ガバナンス体制の整備

MCPを活用する場合、以下のセキュリティアーキテクチャを検討することをお勧めします。

レイヤー

実装要素

対応技術

認証

OAuth 2.0、エンタープライズSSO連携

Azure Entra ID, Okta

認可

ABAC/ReBACポリシー

OPA, OpenFGA

監査

全操作のロギング・トレーサビリティ

JSON-RPC監査ログ

安全性

プロンプトインジェクション対策

AIガードレール


主要クラウドベンダーの動向

AAIFへの参画状況

プロバイダー

AAIF参画

発言・動向

AWS

プラチナメンバー

「開発者がこの普遍的な標準に自信を持って投資できる」

Google

プラチナメンバー

マネージドMCPサーバーを提供開始

Microsoft

プラチナメンバー

「オープンで相互運用可能で信頼性の高い基盤」を支持


注目ポイント:協調と競争の両立

各社はAAIFに参画しつつ、自社の独自サービス(AWS Bedrock、Google Vertex AI、Azure AI Foundry)も並行して推進しています。


これは、基盤レイヤーでは協調、付加価値レイヤーでは競争という構造を示しています。企業にとっては、共通規格に準拠した基盤の上で複数ベンダーのサービスを比較・選択できる環境が整いつつあります。


homulaが提供する支援

株式会社homulaは、日本のエンタープライズ企業向けに、MCPやn8nを活用して最適なAIエージェントアーキテクチャを設計・実装するAIソリューション・アーキテクトです。

homulaの強み

領域

提供価値

戦略策定

共通規格を踏まえたAIエージェント導入ロードマップ設計

アーキテクチャ設計

MCP、n8n、LangGraphを組み合わせたBest-of-Breed構成

ガバナンス構築

エンタープライズセキュリティ要件に準拠した統合基盤

実装支援

MVP開発から本番運用までのEnd-to-Endサポート

独自基盤「Agens」によるMCP活用

homulaは、MCPを活用したエンタープライズ向け統合基盤「Agens」を開発・提供しています。Microsoft 365、Salesforce、SAPといった基幹システムとのセキュアな接続を実現し、データサイロの解消とAIエージェントの実効性向上を支援します。


まとめ:共通規格を押さえることで得られる3つのメリット

AAIFの共通規格をフォローすることで、以下のメリットが得られます。

  1. 相互運用性の確保: MCP準拠により、異なるAIモデル・ツール間でのシームレスな連携が可能に

  2. ベンダーロックインの回避: 特定ベンダーに依存しない技術選択の自由度を確保

  3. 将来の作り直しリスクの軽減: グローバルで普及する共通規格に準拠することで、技術進化への追従コストを最小化


Linux FoundationのJim Zemlin氏(エグゼクティブディレクター)が述べるとおり、「主導権はベンダーの意向ではなく、技術的メリットによって決まる」時代が来ています。

独自仕様で作り込んでから「しまった」とならないよう、今のうちにこの共通規格の動きをフォローしておくことをお勧めします。

homulaは、この共通規格を活かしたAIエージェント導入を、技術と戦略の両面から支援します。


よくある質問(FAQ)

Q. AAIFとは何ですか?

A. Agentic AI Foundation(AAIF)は、Linux Foundationの傘下に設立されたAIエージェント関連の共通規格を策定・管理する組織です。OpenAI、Anthropic、Block社が共同設立し、AWS、Google、Microsoftなどがプラチナメンバーとして参画しています。

Q. MCPを導入するメリットは何ですか?

A. MCPを導入することで、システムごとの個別接続開発が不要になり、開発コストと保守コストを削減できます。また、将来的にAIモデルやツールを乗り換える際のコストも抑えられます。

Q. 既に独自仕様で開発を進めていますが、どうすればよいですか?

A. まずは現状のアーキテクチャを棚卸しし、MCPへの移行パスを検討することをお勧めします。全面的な作り直しではなく、新規開発部分からMCP準拠に切り替え、段階的に移行していくアプローチが現実的です。

Q. 中小企業でも共通規格を活用できますか?

A. はい。MCPやAGENTS.mdは誰でも自由に使える共通規格であり、企業規模を問わず利用可能です。n8nのようなオープンソースツールと組み合わせることで、低コストでの導入も実現できます。

Q. homulaに相談するにはどうすればよいですか?

A. homulaでは、AIエージェント導入の無料相談を実施しています。お客様の業務課題に対するAI活用の可能性診断、導入による効果試算、他社導入事例のご紹介、最適な導入プランのご提案を行っています。

 
 
 

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